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こんにちは、がくです。福島県白河市で肉屋「肉の滝沢」をやっています。
精肉専業となって約28年、毎日のように肉と一緒に「脂」にもふれてきました。
いつもの焼肉やからあげ、チャーハン。同じ肉、同じ味つけで作っているのに、お店で食べると「なんだか香りが違うな」と感じたことはありませんか。
その違いをつくっているもののひとつが、焼くときや揚げるときに使う「脂」なんです。
牛の脂の「牛脂」、豚の脂の「ラード」、鶏の脂の「鶏油(チーユ)」。どれも肉から取れる脂ですが、香りも溶け方も少しずつ違います。料理に合わせて使い分けるだけで、家のごはんがぐっとお店の味に近づきますよ。
今回は、精肉店ならではの目線で3つの脂の使い分けをお話しします。最後には、肉の滝沢で実際にフライヤーの油を肉ごとに変えていたころの裏話も書きました。
牛脂・ラード・鶏油は何が違う?
まずは3つの脂の違いを、ざっくり表にまとめました。
| 脂 | もとになる肉 | 溶ける温度(融点)の目安 | 向いている料理 |
|---|---|---|---|
| 牛脂 | 牛 | 40〜50℃ | 焼肉・すき焼き |
| ラード | 豚 | 33〜46℃ | 揚げ物・炒め物 |
| 鶏油 | 鶏 | 30℃前後 | 中華・ラーメン |
融点の目安は、牛脂とラードはデリッシュキッチン、鶏油はWikipedia「鶏油」によるものです。
融点というのは、脂が溶けはじめる温度のことです。牛脂がいちばん高く、鶏油がいちばん低いんですね。
脂は温度が下がると固まってくるので、冷めたときの口当たりにもこの違いが出ます。「熱いうちに食べる料理か、冷めてから食べることもある料理か」も、使い分けを考えるヒントになりますよ。
牛脂は焼肉・すき焼きに
牛脂のいちばんの持ち味は、牛肉らしい香りとコクです。
だから相性がいいのは、やっぱり牛肉の料理。焼肉とすき焼きは、牛脂の出番ですね。


焼肉のときは
鉄板やホットプレートを温めたら、焼く前に牛脂をすべらせて表面になじませます。肉がくっつきにくくなるうえ、牛の香りがふわっと立ちますよ。
赤身の多い肉を焼くときは、脂が少ないぶん香りも控えめになりやすいので、牛脂でコクを足してあげるのもひとつの方法です。
焼肉の部位選びについては、こちらの記事でもくわしくお話ししています。
→精肉店主が選ぶ、焼肉の部位おすすめ6選|タン・ハラミ・カルビ・ロースと食べ比べセットを比較
すき焼きのときは
すき焼きは、鍋をよく温めてから牛脂を溶かし、そこで肉を焼くところから始めるのが定番ですよね。
最初に牛脂の香りを鍋に移しておくと、割下を入れたあとも牛の風味がしっかり残ります。
すき焼きの思い出は、季節の記事にも書きました。
→季節のミートカレンダー・冬編|冬は鍋。数十年たっても忘れられない、すき焼きの食卓
牛脂の気をつけたいところ
融点が高いぶん、冷めると固まりやすいのが牛脂です。お弁当のおかずなど、冷めてから食べる料理には向きにくいので、熱いうちに食べる料理で使うのがおすすめですよ。
ラードは揚げ物・炒め物に
ラードは、豚の脂ならではの甘みのある香りとコクが持ち味です。



揚げ物のときは
とんかつやコロッケ、からあげなどの揚げ物にラードを使うと、香ばしさとコクがぐんと増します。
ラードだけで揚げると香りがかなりしっかり出るので、ふだんの揚げ油に少し加えるところから試してみるのもいいですね。量に余裕があれば、ラードだけで揚げても美味しく仕上がります。家族の好みに合わせて、量を加減してみてください。
ちなみに肉の滝沢では、ラードは他の油と混ぜず、単品で使っています。
炒め物のときは
チャーハンや野菜炒めの炒め油にも、ラードはよく合います。デリッシュキッチンでも、ラードは野菜炒めやチャーハンの炒め油、餃子やシュウマイへの練り込みなど、中華料理によく使われると紹介されています。
あっさりした野菜炒めも、ラードで炒めると奥行きのある味になりますよ。
豚肉の脂身から取ることも
豚バラ肉や厚切りの豚ロースを焼くと、フライパンに脂が出てきますよね。あの脂も豚の脂です。続けて野菜を炒めると、ラードを足さなくても豚の香りが移ります。
鶏油は中華・ラーメンに
鶏油(チーユ)は、鶏の脂を加熱して取った油です。Wikipedia「鶏油」でも、ラーメンスープの風味づけや中華料理に使われると説明されています。



ラーメンのときは
インスタントラーメンでも、仕上げに鶏油を少したらすだけで、鶏の香りがふわっと広がります。しょうゆ味や塩味のラーメンと相性がいいですよ。
ラーメンにのせるチャーシューを手作りしたい方は、こちらもどうぞ。
→豚肩ロースブロックのチャーシューガイド|下ごしらえと煮込みすぎないコツ
中華のときは
チャーハンや野菜炒め、スープの仕上げに少し加えると、鶏のやさしい香りがつきます。ラードよりも軽い香りなので、こってりさせすぎたくないときにも使いやすいですね。
鶏皮から取ることも
鶏皮をフライパンで弱めの火でじっくり焼くと、脂が出てきます。これも鶏の脂です。残った鶏皮はカリッと焼けているので、おつまみにもなりますよ。
肉の滝沢の裏話|フライヤーの油を肉ごとに変えていたころ
ここからは、うちの店の話です。
実は肉の滝沢では一時期、お惣菜を揚げるフライヤーの油を肉ごとに使い分けていました。
- 牛肉のお惣菜は、牛脂で
- 豚肉のお惣菜は、豚脂で
- 鶏肉のお惣菜は、鶏油で
それぞれの肉に、同じ動物の脂を合わせるやり方です。
本当は、お客様に「どの脂で揚げますか」と選んでいただけるような売り方ができたら、と思っていました。でも、それには手間も人件費もかかります。結局、そこまでは実現できませんでした。
実際に続けてみても、大変だったんです。脂ごとにフライヤーを分けて管理する手間がかかりますし、そうした使い分けをしていることも、なかなかお客さんに知っていただけませんでした。
そこで、牛脂と鶏油での揚げ物はやめることにしました。
そのなかで、豚脂だけは今も一部の商品で使い続けています。お店で豚の脂を自家精製して作っているんですよ。
使い分けの目安はこんな感じです。
- ラードで揚げるもの:レバー、白もつ、砂肝、こめかみ(かしら)の唐揚げなど、生の状態にタレを直接からめて揚げるホルモン系の商品
- 白絞油(しらしめゆ)で揚げるもの:メンチカツ、とんかつ、ハムカツなど、パン粉をつけるフライ系の商品
白絞油はクセがなく、揚げ上がりが軽いのが良いところです。メンチカツの記事でも、白絞油で揚げる理由をお話ししています。
お店では手間との兼ね合いで全部は続けられませんでしたが、家庭なら話は別です。1回の料理で使う量は少しなので、「今日は焼肉だから牛脂」「今日はチャーハンだからラード」と、気軽に試していただけます。
使うときに気をつけたいこと
使う量は少しずつ:動物の脂は香りがしっかり出ます。最初は少なめにして、好みに合わせて増やしてくださいね。
冷めたときを考える:融点の高い脂ほど、冷めると固まりやすくなります。お弁当など冷めてから食べる料理では、脂の種類や量を控えめにするのがおすすめです。
保存は表示に従って:市販品は、パッケージに書かれた保存方法と期限を守ってください。
流しに捨てない:使い終わった脂は冷えると固まります。排水管に流さず、紙や布に吸わせるなど、お住まいの地域のルールに沿って処分してくださいね。
楽天で買える牛脂・ラード・鶏油
なお、私はこれらの商品を購入・調理・実食していません。商品の情報は販売ページの記載(記事作成時点)をもとにしており、おすすめする理由は精肉店主としての見解です。価格・評価・送料・在庫は変わることがありますので、ご購入前に必ず商品ページでご確認ください。
牛脂
肉かすの酒井商事「焚きあげ牛脂(200g)」
- 国産牛背脂、直火式平釜で焚き上げた未精製の牛脂
- 200g、お試しサイズ
- レビュー4.68(40件)
国産牛背脂を直火式平釜で丹念に焚き上げた、未精製の牛脂です。お試しサイズで、まずは焼肉やすき焼きで試してみたい方に向いています。
ラード
肉かすの酒井商事「焚きラード(900g)」
- 豚背脂を平釜で焚き上げた未精製のラード
- 900g、業務用サイズ
- レビュー4.59(49件)
豚背脂を平釜でじっくり焚き上げた、未精製のラードです。「町の肉屋さんが手間暇かけて作っていたあのラード」という紹介文の通り、昔ながらの製法にこだわった1点です。
鶏油
肉かすの酒井商事「チキンオイル(200g)」
- 国産親鳥(廃鶏)の脂を原料にした鶏油
- 200g、お試しサイズ
- レビュー4.60(75件)
一年以上育った国産親鳥(廃鶏)の脂を原料にした鶏油です。ラードよりあっさりとしたコクが出るので、中華やラーメンの仕上げに少量使うのに向いています。
まとめ|脂を変えると、いつもの料理が変わる
- 牛脂は、焼肉・すき焼きに。牛肉の香りとコクを足してくれる
- ラードは、揚げ物・炒め物に。豚の脂の甘い香りが広がる
- 鶏油は、中華・ラーメンに。鶏のやさしい香りが仕上げに効く
肉の滝沢でも、一時期は牛・豚・鶏で揚げ油を使い分けていました。手間の問題で、今も続けているのは一部の商品の豚脂だけですが、「脂を変えると味が変わる」ことは、肉屋として実感してきたことです。
いつもの料理に、少しだけ脂を足してみる。それだけで、食卓の会話が少し弾むかもしれませんよ。ぜひ試してみてくださいね。

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