こんにちは、がくです。福島県白河市で肉屋「肉の滝沢」をやっています。精肉専業となって約28年、毎日肉と向き合っています。
今回は、いつもの肉の解説とは少し違う「実験記録」です。福島県喜多方市塩川町の名物、鶏皮の煮込みを肉屋の台所で再現してみました。1回目はとろとろの食感にはなったものの味が目標に届かず、2回目でにんにくを足して再挑戦。完成したレシピではなく、試している途中の記録として読んでいただけたらうれしいです。
きっかけはお客様からの「宿題」
ある日、お客様が塩川町の名物だという鶏皮の煮込みを買ってきてくださいました。そして「お前も作ってみろ」と、そのまま私に渡してくれたんです。
パックには店名も商品名も書かれていませんでした。一味唐辛子の小袋が2袋付いているだけの、知る人ぞ知る、といった雰囲気の素朴なパッケージです。こういう飾り気のない品にこそ、地元で長く食べられてきた味が詰まっている気がして、肉屋としては心が動きました。
食べてみると、鶏皮には少し肉がついていて、味付けは甘塩っぱい感じ。ご飯がすすむ、なんだか懐かしい味でした。
塩川の「鳥モツ」は、実は鶏皮
塩川町で「鳥モツ」と呼ばれるこの料理、モツといっても内臓ではありません。喜多方市の紹介ページによると、塩川鳥モツは「鳥皮」を煮込んだ料理で、令和5年度に「未来の100年フード部門」に認定されています(認定団体は塩川鳥モツ伝承会)。(喜多方市公式サイト)
由来も興味深いものでした。同じく喜多方市の説明では、昭和初期に養鶏業が盛んになったころ、商売にならなかった部位の鳥皮を家庭で煮込んで食べたのがルーツと言われているそうです。地元の食堂では、「モツ煮」といえば鶏皮の煮込みが出てくるほど親しまれている、とも書かれています。(喜多方市公式サイト)
売り物にならない部位を、家庭で工夫しておいしく食べる。肉屋の私にとっては、とても身近に感じる話です。
味付けは一つに決まっているわけではありません。喜多方市によると、各店の料理人がそれぞれ独自の調理方法と味付けで出しているそうです。
いただいたパックはどのお店のものか分かりません。なので今回は「あのお店の味」ではなく、手元のパックの味を目標にした「塩川鳥モツ風」として作っています。
基本の配合(鶏皮1kgあたり)
試作のベースにした配合です。
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 鶏皮 | 1kg |
| 水 | 700ml |
| 醤油 | 大さじ5(味見をして最大大さじ6まで調整) |
| 酒 | 大さじ6 |
| みりん | 大さじ4 |
| 砂糖 | 小さじ2〜3 |
| にんにく | 3〜4片 |
| 長ねぎ・一味唐辛子 | 仕上げに好みで |
量を増やすときは、水・調味料もすべて同じ比率で増やします。
下処理:ここで仕上がりが決まる
鶏皮の煮込みは、下処理が大事だと感じています。
- 大きめの鍋に湯を沸かし、鶏皮を入れて5分下ゆでします。

- ゆで汁は捨てて、粗熱を取ります。

- 羽根の残りや、大きな脂の塊を取り除きます。

- 下ゆで後の重さを量っておきます。
下ゆでをすると脂と水分が抜けるので、重さが変わります。下ゆで後の重さを量っておくと、次に配合を変えたときに比べやすくなります。試作を何回か重ねるつもりなら、量っておくのがおすすめです。
羽根の残りは、明るい場所で見ると意外と見つかります。ここを丁寧にやるかどうかで、口に入れたときの印象がずいぶん変わります。
煮込み:最後の焦げつきに注意
- 鍋に鶏皮と水、調味料を入れて火にかけます。
- 沸いたら弱火にし、アクと浮いた脂を取りながら煮ます。

- 40〜60分を目安に、好みの軟らかさになるまで煮込みます。
- 終盤は煮汁が少なくなって焦げやすいので、鍋底からこまめに混ぜます。

- 器に盛り、長ねぎと一味を添えて完成です。
煮汁が煮詰まってくる最後の10分くらいは、鍋から目を離さないほうが安心です。鶏皮からは脂だけでなく、とろみのもとも出てくるので、鍋底にくっつきやすくなります。
1回目:鶏皮1kg、にんにく抜きで試作
1回目は鶏皮1kg、小さく2〜3cmにカットして試作しました。最初はにんにく3〜4片を入れる配合で考えていましたが、1回目はあえて入れずに作っています。

できあがりは、とろとろとした食感になりました。ここは満足しています。
ただ、お客様からいただいたパックと比べると、味はやや薄め。食べやすいとも言えますが、目標にしていた甘塩っぱさや、ご飯がすすむ力強さには届いていませんでした。
薄く感じた理由は一つではないと思います。ただ、一番に考えたのは、にんにくを入れなかったことです。塩分の量だけでなく、にんにくの香りやコクも味の濃さの感じ方に関わっているのではないか。はっきりした根拠があるわけではなく、肉屋としての感覚的な推測でしたが、次はにんにくを足して試してみることにしました。
2回目:にんにくを足して2kgで再挑戦
2回目は量を2kgに増やし、水・調味料もすべて2倍にして作りました。煮込み時間は1回目と同じく、レシピ通りです。
今回変えたのは2点です。
- にんにくを配合通り加えた
- 鶏皮を2〜3cmに切らず、大きいままで煮込んだ
煮詰め終わったら、3パックに分けました。

食べてみると、1回目よりイメージに近い味になりました。にんにくを足したことで、目標にしていた甘塩っぱさに近づいた手応えがあります。
鶏皮を小さくカットしなかった点については、味の染み込み方は小さく切ったときとあまり変わらない印象でした。ただ、食べやすさの面では小さいほうがいいかもしれない、というのが今の感触です。
もう一つ、今回は鶏皮だけで作りましたが、お客様からいただいたパックのように少し肉がついているほうがいいのか、鶏皮だけのほうがいいのか。これはまだ微妙なところで、好みの問題かもしれません。
ご家庭で試すときのポイント
まだ途中の記録ですが、今回やってみて分かったことをまとめておきます。
- 下処理を丁寧に:羽根の残りと大きな脂の塊を取るだけで、口当たりがぐっとよくなります。
- にんにくは入れたほうがいい:1回目はにんにくなしで作って味が薄く感じました。目標の甘塩っぱさに近づけたいなら、配合通りに入れるのがおすすめです。
- カットサイズはお好みで:味の染み込みはあまり変わりませんが、食べやすさを考えると2〜3cmくらいに切っておくほうが扱いやすいかもしれません。
- 醤油は最後に味見して調整:一度に入れきらず、煮詰まった状態で味を見てから足すほうが失敗しにくいです。
- 終盤は鍋底から混ぜる:焦げると全体に苦みが移ってしまいます。
鶏皮だけで作るのが不安な方は、まず少ない量から試してみてください。鶏皮の脂の使い方に興味がある方は、以前書いた牛脂・ラード・鶏油、料理で使い分けると味が変わるの記事も参考になると思います。
郷土の味を追いかけるということ
今回2回試作してみて感じたのは、郷土の味は分量表だけでは再現しきれないということです。その土地の人が何十年も作り続け、食べ続けてきた中で、ちょうどいい塩梅ができあがってきたのだと思います。
にんにくを足したことで、目標にしていた味にはだいぶ近づきました。「お前も作ってみろ」と渡してくれたお客様に、いつか「これだ」と言ってもらえる味を目指して、もう少し試作を続けます。また新しい発見があったら、ここで報告しますね。

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