うちの子に馬肉をあげたいけど、どの部位を選べばいいの?店頭でよく聞かれる質問です。
答えは馬のネック肉。国産馬肉を扱う精肉店の店主が、なぜネックを選ぶのか、犬猫にどう与えればいいのか、寄生虫リスクへの対策や保存のコツまで、59年間の精肉店の歴史と自宅の秋田犬・愛猫との暮らしの中で得た一次情報で伝えます。
このページを読み終える頃には、愛犬愛猫のごはんに馬ネックを取り入れるという選択肢が、きっと現実的なものに変わっているはずです。
なお、犬の手作りごはんに馬肉全般を取り入れる際の低カロリー・低アレルゲンという基本的なメリットについては、以前「犬の手作りご飯に馬肉ガイド」でも紹介しました。今回はその中でも「どの部位が一番おすすめか」という一歩踏み込んだテーマです。
馬ネック肉とは|肉屋が店頭で見ている実物の姿
馬の首の肉は、その名の通り首の部分の肉です。よく動く部位で筋肉が発達しており、脂肪はほとんどついていません。
うちの店で扱っている馬ネックの見た目は、こんな感じです。
- 色:黒っぽい、濃い赤
- 脂:サシほぼ入らない。ごく稀に少しの筋と黄色い部分が見える程度
- スジ:多少あるが、カットに支障はない量
- 触感:モモ・ヒレと比べれば硬めだが、赤身は濃い
牛や豚の首と比べても、馬の首は際立つ赤みが見えてきます。この濃い赤こそが、鉄分を豊富に含んでいる証拠です。赤身の色は、酸素を運ぶミオグロビンやヘモグロビンの色。色が濃いほど、これらの含有量が多い傾向にあります。

他部位との比較
うちの店で実際に扱っているのは、モモとネックの2部位です。

| 部位 | 特徴 | 価格(1kgあたり) |
|---|---|---|
| モモ | 赤身中心・柔らかい | 14,000円 |
| ネック | 赤身濃い・脂ほぼなし・やや硬め | 1,500円 |
同じ頭の馬から取れる肉でも、部位によって価格は約9倍の差があります。ネックは市場価値としては安い部位ですが、栄養価的には他の赤身部位と大きく変わりません。ここが、ペット用として馬ネックを推す最大の理由の一つです。
なぜネックがペット用にベストなのか
多くの通販サイトや獣医記事では、犬猫への馬肉としてヒレ・ロース・モモがすすめられています。しかし、精肉店の現場から見て、ペットに継続して与えるならネック一択です。
理由1|赤身が濃く、鉄分が豊富
馬肉全般が高たんぱく・低脂質で鉄分豊富な食材ですが、首は特に赤身の色が濃い部位です。
一般的な馬肉100gあたりの栄養は、エネルギー約110kcal、たんぱく質約20.1g、脂質約2.5g、鉄分約4.3mgとされています。これは牛肉や豚肉と比べても鉄分が豊富な部類です。馬肉の中でもネックは色が最も濃いため、赤身部位の中でも鉄分の期待値が高いと考えられます。
理由2|継続できる価格
ペット用の馬肉ミンチは、大手通販だと1kgあたり3,000〜3,500円が相場です。品質は素晴らしいものの、大型犬や多頭飼いの家庭では継続が難しい価格帯です。
うちの店の馬ネック角切りは1kg1,500円(税込)。国産の馬肉としては業界最安レベルだと思います。
ここまで価格を抑えられる理由は、人間用のカットで生じる端材を活用しているからです。「良いものを、続けられる価格で。」この願いから生まれた商品です。
理由3|噛みごたえがある
ミンチは食いつきは良いですが、丸呑みになりやすいという側面があります。特に食欲旺盛な犬は、味わう前に丸呑みしてしまうこともあります。
角切りの首肉は、モモやヒレより少し硬いので、しっかり噛む必要があります。これは顎の運動になり、早食い防止にもつながります。
硬すぎて食べられないのではと心配される方もいますが、加熱すればしっかり火が通って犬猫でも問題なく食べられる硬さになります。
理由4|脂がほとんどない
馬肉全体が脂質の低い食材ですが、首は特に脂が少ない部位です。皮下脂肪も筋間脂肪もほとんどないため、以下のようなペットに向いています。
- ダイエットが必要な犬猫
- シニア期で運動量が減ってきた子
- 膵臓や消化器が弱い子(獣医師の指示を仰いだ上で)
- 涙やけや皮膚トラブルが気になる子(低脂質・低アレルゲン食材への切り替えが良い方向に働いたと言われることがあります)
「赤身肉は健康にいいのでは」あるお客様がそう言って、加齢で弱った老猫に人間用の馬刺しを与えていました。その言葉が、店頭でペット用馬ネックの取り扱いを始めるきっかけになりました。残念ながら、うちが馬ネックを扱い始めた頃には、その子はもう亡くなっていました。
そもそも馬肉全般がペットに向いているのか
ネックの話に入る前に、そもそもなぜ馬肉が犬猫に良いのかを簡単に整理しておきます。
1. 生食が可能な数少ない食肉
馬肉は、人間が生(馬刺し)で食べられる希少な食肉です。理由は大きく2つあります。
- 馬の体温は牛や豚より高いため、寄生虫や雑菌が付きにくいとされています
- 反芻動物ではないため、O157などの腸管出血性大腸菌を保有しているケースが少ないとされています
これは犬猫にとっても大きなメリットです。牛や豚の生食は寄生虫・細菌リスクが高く推奨できませんが、馬肉は他の食肉に比べてリスクが低いとされています。
2. 低アレルゲンで新規たんぱく質源になる
日本の一般的なドッグフード・キャットフードは、鶏・牛・豚・魚がベース。馬肉を食べる機会はほとんどありません。
これはアレルギー対策の観点で大きなメリットです。もちろん個体差はあるので、初めて与えるときは少量からのスタートが基本です。
3. 高たんぱく・低脂質・低カロリー
馬肉100gあたり約110kcalは、牛肉(200〜300kcal)や豚肉(200〜400kcal)の半分以下。鶏ささみ(105kcal)と同等です。
たんぱく質は約20.1gと十分な量が摂れ、脂質は約2.5gと非常に少ない。ダイエット中、シニア期、術後回復期のペットに向いている構成です。
犬|馬ネック肉の与え方
ここからは実践編です。うちの秋田犬「さき」に、実際に馬ネックを週2回ほど与えています。

生か加熱か、どちらが安心か
うちでは加熱派です。理由を正直に書きます。
馬肉は生食可能とはいえ、サルコシスティス・フェアリーという寄生虫のリスクは完全にはゼロになりません。この寄生虫は馬を中間宿主、犬猫を終宿主とするため、犬猫に与える生の馬肉こそ注意が必要です。
この寄生虫は、一定の低温で一定時間冷凍することで死滅するとされています。ただし、業務用の急速冷凍設備があればこの条件をクリアできますが、家庭用の冷凍庫では中心温度を長時間低く保つのは簡単ではありません。ドアの開閉、食材の詰め込み具合で庫内温度は変動します。
そこで、家庭ではしっかり加熱する方法を選んでいます。加熱すれば寄生虫リスクは確実にゼロになります。
生で与えたい場合は、必ず業務用急速冷凍を通した商品を選ぶことが絶対条件です。
1日あたりの目安量
犬の1日の馬肉摂取量の目安は、体重の1〜2%とされています。
| 体重 | 目安量 |
|---|---|
| 3kg(小型犬) | 30〜60g |
| 5kg(トイプードル・ミニチュアダックス等) | 50〜100g |
| 10kg(柴犬・コーギー等) | 100〜200g |
| 20kg(ボーダーコリー・シェパード等) | 200〜400g |
| 40kg(秋田犬・ラブラドール等) | 400〜800g |
ただし、これは馬肉だけで1日の食事をまかなう場合の量です。総合栄養食のドッグフードにトッピングとして与える場合は、1日の総カロリーの10%以内を目安にすると安全です。
うちの「さき」には、1回20〜30gを週2回、加熱したものを与えています。ドッグフードのトッピングとして少しずつ加えるだけでも、食いつきが違いますし、元気になったような気がします。
加熱方法|実際の手順
うちでの与え方は以下の流れです。

- 1kgの真空パックを、一度まとめて茹でる(角切りのため、焼くと火の通りにムラが出やすく、茹でるのが基本です)
- 茹でたものを、小分けパックまたは大きめの保存袋に入れて冷凍する
- 与えるときは、1回に食べる分だけ取り出し、ぬるま湯につけて解凍する
- そのままドッグフードにトッピングして与える
先にまとめて茹でておくことで、毎回火を通す手間がなく、解凍するだけですぐに与えられるのが利点です。
塩・胡椒・調味料は一切使いません。素材そのままの味が犬猫にとって最高のごちそうです。
茹で汁も一緒に与えるのがおすすめ。旨味成分と鉄分の一部が溶け出しているので、フードにかければ水分補給と嗜好性アップを同時に満たせます。
猫|馬ネック肉の与え方
うちの猫「権太」も同様に馬ネックを与えています。

猫は完全な肉食動物なので、実は犬以上に馬肉と相性が良い動物です。ただし、猫は犬より体が小さく、消化器も繊細なので、量と切り方には注意が必要です。
1日あたりの目安量
猫の場合も、体重の1〜2%が目安です。
| 体重 | 目安量 |
|---|---|
| 3kg(子猫・小柄な成猫) | 30〜60g |
| 5kg(一般的な成猫) | 50〜100g |
| 7kg(大柄なオス・メインクーン等) | 70〜140g |
トッピングとして考えた場合は、1日10〜30g程度が現実的です。「権太」には、20〜30gくらいの塊を分けて与えています。
猫に与えるときのポイント
- 細かくカット:角切りをさらに小さく切る、または加熱後にほぐす
- 必ず加熱:猫は犬以上に寄生虫や細菌に弱い傾向があります
- 冷ましてから:熱すぎると口内を傷めるので人肌程度まで冷ます
- 主食にしない:総合栄養食のキャットフードを基本に、トッピングとして使う
猫は好みが強く、一度馬肉の美味しさを覚えると、普段のフードを食べなくなるケースがあります。
最重要|寄生虫サルコシスティス・フェアリー対策
犬猫に馬肉を与える際、最も注目すべきなのがサルコシスティス・フェアリーという寄生虫です。
この寄生虫の基礎知識
- 馬を中間宿主、犬猫を終宿主とする
- 犬猫が感染すると、一過性の吐き気や下痢が起きることがある
- 重症化するケースは少ないが、子犬・子猫やシニア期の子では体力を奪うことがある
- 人間には寄生しないが、馬刺しを食べた人が下痢をしたケースもあります
家庭でできる対策
対策は2つです。
対策1|完全に加熱する(推奨)
これが最も確実です。中心部までしっかり火が通れば、寄生虫は死滅します。焼く・茹でる・蒸すのどれでも構いません。
対策2|業務用急速冷凍品を選び、家庭でも冷凍保存する
生食で与えたい場合は、業務用の急速冷凍を経た商品を選ぶことをおすすめします。
うちの馬ネック(1kg真空パック)も冷凍で提供していますが、家庭用冷凍庫に入った後の温度管理は各家庭の環境次第です。生で与えたいというお客様には、「業務用急速冷凍を通した商品でも、加熱してあげるのが最も安全です」と伝えています。
保存方法|肉屋のプロが教える正解
うちで販売している馬ネックは1kg真空パック・冷凍の状態でお渡ししています。届いた後、または買って帰った後の扱い方をまとめます。
冷凍のまま保存する場合
- そのまま冷凍庫の奥(温度変化の少ない場所)へ
- 家庭用冷凍庫での保存の目安は1〜2ヶ月
- 開けていない真空パックのままなら、酸化・冷凍焼けはほぼ防げます
使う分だけ小分けにする場合
1kgをそのまま使い切るのは、小型犬・猫の家庭では難しいので、開けてすぐに小分けにするのがおすすめです。
- 真空パックを開く
- 1回分(20〜100g)ずつラップで包む
- さらにジップ付き冷凍保存袋に入れて空気を抜く
- 金属トレイに乗せて急速冷凍
- 凍ったら冷凍庫の定位置へ
金属トレイに乗せるのは、熱伝導を早めて凍結時間を短縮するためです。
解凍方法
うちではお湯解凍をしていますが、時間があれば以下の方法もおすすめです。
| 方法 | 時間 | 安全性 | 手軽さ |
|---|---|---|---|
| 冷蔵庫解凍 | 半日〜1日 | ◎ | ○ |
| 氷水解凍 | 1〜2時間 | ◎ | △ |
| お湯解凍(袋のまま湯せん) | 10〜30分 | ○ | ◎ |
| 常温解凍 | – | × | – |
| 電子レンジ解凍 | – | × | – |
常温解凍と電子レンジ解凍は避けてください。常温だと表面から菌が繁殖するリスクがあり、電子レンジは加熱ムラでたんぱく質が変性してしまいます。
どの方法で解凍した場合も、そのまま与えるのではなく、解凍後にお湯でしっかり加熱してから与えることをおすすめします。生のまま与えたい場合は、前述の通り業務用急速冷凍を経た商品を選んだ上での判断になります。
うちがお湯解凍を使うのは、袋のまま湯せんで短時間解凍でき、そのまま加熱の工程にも移りやすいからです。
遠方で来店が難しい方へ
うちは白河市の実店舗のみで、通信販売は準備中です。近くに来られない方向けに、国産・角切り・無添加という条件が近い通販商品を一つ紹介しておきます。
もちろん、うちの馬ネックが一番安く続けやすい自信はあります。通信販売の準備が整い次第、このブログでお知らせします。
与えてはいけない・注意すべきケース
素晴らしい食材でも、すべての犬猫に無条件でおすすめできるわけではありません。
腎臓病の犬猫
馬肉は高たんぱくな食品です。腎臓病の子はたんぱく質制限が必要なため、獣医師と相談せずに与えるのは避けてください。すでにたんぱく質制限療法食を食べている子には、独断でトッピングを追加しないでください。
初めて馬肉を食べる子
馬肉アレルギーは限りなく稀ですが、個体差があります。初回は5〜10g程度の少量から始めて、24時間以内に以下の症状が出ないか観察してください。
- 下痢
- 嘔吐
- 皮膚のかゆみ・赤み
- 目の充血
- 元気消失
異変があればすぐに獣医師に相談してください。
子犬・子猫、シニア期の子
消化器が繊細です。小さく切って、必ず加熱して、少量から始めてください。硬いまま与えると、噛みちぎらずに丸呑みしてしまう可能性があります。
主食にしない
馬肉は総合栄養食にプラスする栄養補助として使ってください。馬肉だけでは、犬猫に必要なビタミン・ミネラル・炭水化物・食物繊維がすべて揃いません。総合栄養食のドッグフード・キャットフードを基本に、そこに馬肉を加えるのが理想です。
よくある質問

Q1. スーパーの馬刺しをそのまま犬猫にあげてもいいですか?
人間の生食用として販売されている馬刺しは食品衛生法に基づいた衛生管理を経ているものですが、加熱してから与えるのが安全です。
Q2. ミンチと角切り、どっちがいい?
大型犬・中型犬・成猫には角切りをおすすめします。噛みごたえがあり、丸呑み防止になります。子犬・子猫・シニアには、細かく切るか、加熱後にほぐして与えてください。
Q3. 1kgパックは大きすぎませんか?
開けてすぐに小分けすれば問題ありません。犬1頭なら1〜2ヶ月分、大型犬なら1週間〜1ヶ月分の量です。多頭飼いの家庭やお友達と分ければ、ちょうど使い切れる量になります。
Q4. 冷凍庫でどれぐらい保存できますか?
家庭用冷凍庫で1〜2ヶ月が目安です。真空パックのままだと酸化しにくいので長持ちしますが、開封後は空気に触れた分だけ傷みが早くなります。小分けラップ+ジップ袋の二重密封で1ヶ月以内に使い切るのが安全です。
Q5. 他の肉と混ぜていいですか?
問題ありません。鶏むね・鶏ささみ・馬ネックを日替わりで、というローテーションは、栄養バランスとアレルギー予防の両方に良い方法です。
Q6. コウネ(馬のたてがみの下の脂肪)とネックは違う部位ですか?
はい、全く別の部位です。コウネは、たてがみの下、首の上部にある皮下の脂肪の部位で、白っぽい色をしており脂質が多いです。ネックは首の筋肉部分で、赤身が多く脂はほぼありません。栄養特性が真逆ですので、混同しないようご注意ください。
まとめ|精肉店から愛犬・愛猫を持つあなたへ
59年、この地で精肉店を営んできて、たくさんのお客様と、たくさんの犬猫の飼い主さんにお会いできました。
「良いものを、続けられる価格で。」これが、当店が馬ネック肉をペット用に商品化した理由です。
- 国産馬肉を、1kg1,500円(税込)で
- 角切り・真空冷凍の状態で、扱いやすい
- 人間の食用と同じ品質のものを、端材として無駄なく活用
小さな精肉店ができる、最善の答えです。
「これ食べると、うちの子が元気が出るのよ」あの言葉を、今度は他の飼い主さんからも聞かせていただけたら、精肉店冥利に尽きます。
うちの秋田犬「さき」と猫「権太」も、週2回の馬ネックを楽しみにしています。茹でて冷凍しておいたものを、ぬるま湯で解凍して、ドッグフード・キャットフードの上に載せます。
愛犬・愛猫の食卓に、馬ネック肉という選択肢を加えてみませんか。
店頭でお待ちしています。ご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にお声がけください。通信販売についても、準備が整い次第このブログでお知らせします。

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