こんにちは、がくです。福島県白河市で肉屋「肉の滝沢」をやっています。「豚肩ロースブロックを低温調理してみたいけど、生っぽくならないか不安」「何℃で何時間やればいいのか分からない」…そんな声をよく聞きます。低温調理は美味しくできる反面、豚肉は加熱不足だと食中毒のリスクがあるので、温度と時間の考え方はちゃんと押さえておきたいところなんです。精肉店の目線で、安全な温度・時間の基準としっとり仕上げるコツをまとめました。
結論から言うと、豚肩ロースブロックの低温調理は「63℃で30分以上(またはこれと同等以上)中心部を加熱する」のが厚生労働省の基準です。ただしお湯の温度がすぐに肉の中心に伝わるわけではないので、ブロックの太さに応じてお湯に入れてから合計2時間半〜4時間半ほどかかると考えてくださいね。中心温度計で確認するのが一番確実です。
豚肩ロースブロックが低温調理に向いている理由
豚肩ロースは赤身と脂がバランスよく入っていて、適度な弾力とコラーゲンを持つ部位です。フライパンで一気に焼くと硬くなりやすいのですが、低温でじっくり加熱するとコラーゲンがゆっくりゼラチン化して、しっとり柔らかく仕上がるんです。ロースト用ブロックとして扱いやすいのも、低温調理に向いている理由のひとつですね。
低温調理前の下ごしらえ
常温に戻す(15〜20分ほど)
冷蔵庫から出したての冷たいブロックのままだと、中心温度が上がるまで余計に時間がかかってしまいます。調理前に15〜20分ほど室温に置いて、表面の冷たさを軽く取っておきましょう。夏場は長時間の放置は避けて、常温に置く時間は短めにしてくださいね。
下味と袋への入れ方
- 塩・こしょう:調理前に全体にまぶしておくと、下味がじんわり入っていきます。ハーブやにんにくを一緒に入れても風味がよくなりますよ
- 袋詰め:耐熱性のジップ付き袋に入れ、空気を抜いて密閉します。真空パック器があれば真空にすると、湯との熱伝導がより均一になります
- 水没させる:袋の中に空気が残っていると浮いてしまい、加熱が不均一になるので、しっかり沈めてクリップなどで固定すると安心です
安全な温度と時間の基本(厚生労働省基準)
豚肉はE型肝炎ウイルスやトキソプラズマなど、中心までしっかり加熱しないと防げないリスクがあるため、厚生労働省は豚の食肉について「中心部の温度を63℃で30分間以上加熱するか、これと同等以上」と定めています。また、より短時間で仕上げたい場合は75℃で1分以上という基準もあります。
「63℃30分」と同じくらいの殺菌効果がある条件として、次の組み合わせも公的に示されています。
| 中心部の温度 | 加熱時間(保持時間) |
|---|---|
| 63℃ | 30分以上 |
| 65℃ | 15分以上 |
| 66℃ | 11分以上 |
| 67℃ | 8分以上 |
| 68℃ | 5分以上 |
| 69℃ | 4分以上 |
| 70℃ | 3分以上 |
| 75℃ | 1分以上 |
ここで大事なのは、これは「お湯の温度」ではなく「肉の中心部が到達してからの保持時間」だということ。厚みのあるブロック肉は、お湯に入れてから中心が63℃に届くまでにかなり時間がかかるので、「お湯を63℃に30分沸かした=完成」ではないんです。この点、覚えておいてくださいね。
63℃未満(60〜62℃あたり)でじっくり火を通すレシピも見かけますが、厚生労働省が公式に示している最低ラインは63℃です。63℃未満で仕上げたい場合は、加熱時間をかなり長く取る必要があり、家庭での実践は難易度が上がります。群馬県の食品衛生の注意喚起でも、自己流の低温調理は食中毒のリスクがあると案内されています。安全を優先するなら63℃以上、できれば芯温計での確認を組み合わせるのが安心です。
ブロックの太さ別・低温調理時間の目安
豚肩ロースブロックの太さ(直径)によって、中心まで熱が届く時間が変わります。63℃設定で「お湯に入れてから中心温度が63℃に届き、そこから30分保持し終わるまで」のトータル時間の目安は次の通りです。
| ブロックの直径 | 63℃設定での目安時間(合計) |
|---|---|
| 直径5cm前後(小さめ) | 約2時間30分〜3時間 |
| 直径6cm前後(一般的なサイズ) | 約3時間〜3時間30分 |
| 直径7cm前後(大きめ) | 約3時間30分〜4時間 |
| 直径8cm前後(かなり太い塊) | 約4時間〜4時間30分 |
これはあくまで目安時間です。ブロックの形や脂のつき方でも変わるので、中心温度計を刺して63℃以上になっているかを必ず確認してください。目安時間より少し長めに設定しておいて、途中で中心温度をチェックするのが失敗しない進め方です。
仕上がりの好みで選ぶ温度設定
安全ラインの63℃を守った上で、仕上がりの食感は温度で調整できます。実際に低温調理でよく使われている設定はこちらです。
| 仕上がりの好み | 温度・時間の目安 | 食感の特徴 |
|---|---|---|
| しっとりロースト | 63〜65℃で3〜4時間 | ジューシーで、わずかにピンク色も残る仕上がり |
| 柔らかめのローストポーク | 65℃で3〜4時間 | しっとり感と歯ごたえのバランスがよい |
| ほろほろ(プルドポーク風) | 70℃前後で6〜8時間 | 繊維がほぐれるやわらかさ、手でほぐせる |
チャーシューやローストポークとして食べたいなら63〜65℃、ほろほろにほぐして食べるプルドポーク風にしたいなら70℃前後で長時間、というイメージで選ぶとわかりやすいですよ。
仕上げに焼き色をつける
低温調理したブロックは、そのままだと表面が白っぽく香ばしさがありません。袋から出して水分をよく拭き取り、フライパンやガスバーナーで表面だけを短時間強火で焼くと、香ばしい焼き色がついて見た目も味も格段によくなります。中はすでに加熱済みなので、表面を焼くのは30秒〜1分程度で十分です。
食品安全で気をつけたいポイント
- 豚肉の生食は法律で禁止:豚肉・豚の内臓は2015年の食品衛生法改正で生食用としての提供が禁止されています。低温調理でも中心部が基準の温度・時間に届いているか必ず確認してください
- お年寄り・お子様・妊娠中の方・免疫力が低い方:厚生労働省の案内どおり、中心温度75℃で1分以上の加熱を選ぶのが安心です
- すぐ食べない場合は急冷:加熱後、常温に長く置くと食中毒菌が増えやすい温度帯(20〜50℃)を通過してしまいます。氷水などで冷やし、早めに中心温度を下げるのが目安です。その後は冷蔵し、早めに食べ切りましょう
よくある質問
豚肩ロースブロックの低温調理はそもそも安全なの?
厚生労働省が示す「中心部63℃で30分以上、または75℃で1分以上」の基準を守れば安全に食べられます。ポイントは「お湯の温度」ではなく「肉の中心部の温度と保持時間」なので、中心温度計で確認しながら調理するのが確実です。
63℃未満の低い温度で調理してしまった気がする…どうすればいい?
不安な場合は、フライパンやオーブンで中心温度75℃・1分以上を目安に加熱し直してください。特にお年寄り・お子様・妊娠中の方・免疫力が低い方がいるご家庭では、63℃ぎりぎりの設定ではなく75℃基準を選ぶほうが安心です。
中心温度計がない場合はどうすればいい?
低温調理では見た目だけで加熱十分かどうか判断するのは難しいです。中心温度計がない場合は、低温調理後にフライパンやオーブンで表面だけでなく全体をしっかり加熱し、切ったときに中心部の色が変わっているかを確認する方法が代用になります。できれば1本、料理用の温度計を用意しておくと安心ですよ。
低温調理したブロックはどのくらい保存できる?
加熱後すぐに急冷して冷蔵した場合、2〜3日を目安に食べ切るのがおすすめです。長く保存したい場合は、急冷後に冷凍すれば1ヶ月ほど保存できます。食べる前は中心までしっかり温め直してくださいね。
まとめ
豚肩ロースブロックの低温調理、ポイントをおさらいします。
- 安全基準は「63℃30分以上」または「75℃1分以上」 — 厚生労働省の基準で、これはお湯の温度ではなく肉の中心温度と保持時間のこと
- ブロックの太さで時間が変わる — 直径6cm前後なら63℃で合計3〜3時間30分ほどが目安
- 仕上がりは温度で調整 — しっとりロースト系は63〜65℃、ほろほろプルドポーク風は70℃前後で長時間
- 仕上げに表面を焼く — 短時間強火で香ばしさをプラス
- 中心温度計で確認するのが一番確実 — 目安時間はあくまで参考、心配なときは75℃基準へ
- すぐ食べないなら急冷 — 常温放置を避け、冷蔵・冷凍で早めに食べ切る
ブロック肉の下ごしらえや保存のコツはスーパーのお肉を美味しく保存する正しい方法、豚肉の下処理や臭み消しは肉屋が教える肉の臭み消し完全ガイド、お肉選びの基本は精肉店が教える、家庭で失敗しない肉の選び方でもご紹介しています。
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